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フレップ・トリップ

フレップ・トリップ

北原 白秋

「女性」プラトン社、1925(大正14)年12月号~1927(昭和2)年3月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 145,698 字 · 293 页

青空文庫

いい日和であった。私たちはフレップを摘み、トリップを探してまた心ゆくままに味い、かつ夢みた。そうしてまた耀やかで涼しい風と光と色と音とをもまた十分に新鮮に食らい過ぎるくらいに食らった。セーニャは盛んに跳ねまわっていた。何と黄色いカナリヤであったろう。イフェミヤはその許嫁の従兄と時おり出会ったり、離れたりして摘み耽っていた。彼女は円みのあるいい声の持主であった。暑い暑いといいながら、両手で胸の乳房の上を抱き締め抱き締め、彼女はよく歌った。静かな、しかも強い日光の下で、恋々綿々として彼女は歌った。何という情感的な牧歌であったろう。

帰航の時、私たち一行の舟は右岸の白樺林の前に散在するオロチョン人の部落の前に差しかかった。土人たちは幾つかの煤色の天幕の前に簇っていたが、私たちの舟が通ると盛んに色々の光る布を頭の上でうち振った。私たちもこれに応えた。万歳アい、万歳アい。万歳アい。見ると赭っちゃけた魚の干物が幾並びも棚に掛けられてあった。その魚の干物にも日射しが移りつつあった。

「金太郎、金太郎。」

と、セーニャが伸び上って手を拍いた。

「おおそうか、金太郎がいるのか。