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ごべんのつばき
五瓣の椿
山本 周五郎
「講談倶楽部」1959(昭和34)年1月~9月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 149,721 字 · 296 页
石順や代脈のすることを見ているうちに、いつか診察や投薬のこつを覚え、ぬけ遊びにいっては、岡場所の女などで実地にためしてみた。――それを繰返しているうちに、中年の女の病気の大半が、じつは病気ではなく、精気の不通ととどこおりだということに気がついた。彼はここでもまた、女たちによって道をひらくことができたのである。石順や代脈が留守のとき、彼は婦人科の客にそれをためしてみた。すると五人のうち三人くらいは、明らかに反応を示し、違和が軽快するのを慥かめた。
――その治療法は恥ずべきものとされていた。
婦人科ではそういう診察や治療法は、もっとも卑しく恥ずべきものといわれていた。彼は知らなかったが、患者の中に特に彼を名ざして来る者が多くなり、石順にはその理由がわかったのだろう、それが医者としてどんなに卑しいことであるかを告げ、留守に診察することはならぬと禁じた。だが徳田家は流行っており、石順も代脈もいないことがしばしばあるため、彼が診察することもしぜん黙認されるようになった。こうしてやがて、むさし屋の妻女があらわれたのだ。
彼の治療法を誰かに聞いて、好奇心にかられて来たらしい。