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ごべんのつばき

五瓣の椿

山本 周五郎

「講談倶楽部」1959(昭和34)年1月~9月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 149,721 字 · 296 页

青空文庫

文章は少しも修飾がなく、事実をそのまま書き綴ったらしく、もどかしい云いまわしが多かったけれど、偽りのない感情をあらわしているようであった。

――わたくしは母が赦せませんでした。

母の不貞、不行跡についても、彼女は隠さずに怒りを述べていた。(これらは読者がすでに読まれている)そして、自分が不義の子であると聞かされたとき、しかも母自身が、平然としてそれを語るのを聞いて、殺す気になったという。

――母と子という気持はなくなっていました、人間として赦すことができない、女ぜんたいをけがすものだ、というように感じたのです。

人が生きてゆくためには、お互いに守らなければならない掟がある。その掟が守られなければ世の中は成り立ってゆかないだろうし、人間の人間らしさも失われてしまうであろう。ことに男と女との関係は、お互いの誠実と信頼が根本である。わたくしはまだ情事を知らないから、それがどんなに人を迷わせ、あやまちを犯させるものかはわからないし、世間には密通ということが少なくないことも聞いている。

――けれども母の場合は違うのです。

母が男狂いをした、不義の子を産んだというだけなら、「殺す」