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ごべんのつばき
五瓣の椿
山本 周五郎
「講談倶楽部」1959(昭和34)年1月~9月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 149,721 字 · 296 页
亀戸の寮のことから、屋形船の佐吉のことまでは、もうおしらべ済みでございましょう。わたくしは父の遺してくれた八百両あまりの金で家を借り、小女を雇ってくらしながら、母とかかわりのあった男たちのことをさぐりました。その消息を知っていたのが佐吉で、男の数は八人余でしたが、そのうちどうしても、罪をつぐなわせたい者だけ五人選んだのです。
――この世には御定法で罰することのできない罪がある。
いつかこういうことを書いたのを、お読みになったと思います。あれを書いたときは本当にそう信じていたのです、生みの母を殺し生みの父を殺し、見知らぬ男を五人も殺すというのは、「御定法」では罰することができず、しかも人間としては赦しがたい罪である、ということを信じなければできないことだったと思います。
告白の文章はここで跡切れ、あとは墨の色も新らしく、走り書きで、次のように続いていた。
――わたくしは生みの父を殺しませんでした。
殺せなかったのではなく、「殺さなかった」のである。自分が彼のじつの娘であること、母をふくめて六人を殺したこと、これから自首して出るが、そのときは詳しい理由と、自分が不義の子であり、じつの父は日本橋よろず町の「丸梅」