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にんげんひょう
人間豹
江戸川 乱歩
「講談倶楽部」大日本雄辯會講談社、1934(昭和9)年1~2月、5月~1935(昭和10)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 155,989 字 · 311 页
神谷は、不思議な引力のようなもので、怪人に引きつけられていた。どこまでも、この男の跡をつけてみたいという気持を、おさえることができなくなった。怖ければ怖いほど、その正体が見届けたかった。間もなく恩田は一台の空き車を呼び止めて、その中に消えた。神谷もイライラしながら、あとから来た自動車に飛び乗った。
「あの前の車を、どこまでもつけてくれたまえ、なるべく先方に悟られないように。料金は君のほしいだけあげるから」
深夜の大道は、なんの邪魔物もなく、尾行にはおあつらえ向きであった。二台の車は風を切って矢のように走った。
新宿までは窓外の町並に見覚えがあったが、それから先はほとんど見当がつかなかった。車は場末へ場末へと道を取って、いつの間にか人家もまばらな田舎道へはいっていたが、やがて四、五十分も走ったと思う頃、やっと前の車が停車した。
神谷は先方に気づかれぬよう、半丁も手前で自動車を降りて、運転手にここはどこだと尋ねると、なんでも荻窪と吉祥寺の中ほどらしいとの答えであった。
「じき帰ってくるからね、君はヘッドライトを消して、ここに待っててくれたまえ」
と命じておいて、急いで恩田のあとを追った。