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にんげんひょう
人間豹
江戸川 乱歩
「講談倶楽部」大日本雄辯會講談社、1934(昭和9)年1~2月、5月~1935(昭和10)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 155,989 字 · 311 页
街道の両側には、大入道のように聳えた巨木の並木のあいだに、チラホラと人家があって、ところどころにボンヤリ常夜燈がついている。すかして見ると、恩田の黒いコウモリのような姿は、その街道の半丁ほど先を、大股に歩いて行く。
ちょうど彼の黒い影が、一つの常夜燈の下を通りかかった時であった。突然、行く手から一匹の犬が走り寄って、けたたましく吠え立てた。
恩田は足を上げて「シッ、シッ」とそれを追ったけれど、そうすればするほど、犬はますます吠え立てるのだ。犬とても、彼の異形の風体には、脅えないではいられなかったのであろう。
この小動物の執拗な攻撃に、怪人はまたしても激情のじだんだを踏みはじめた。足を交互に上げて、両手を胸の前で握りしめて、ここからは聞こえないけれど、おそらく例の歯ぎしりを噛んでいるのに違いない。実になんともいえない無気味な気違い踊りをはじめた。
それを見たら、人間ならたちまち震えあがって逃げ出すのであろうが、犬は逃げるどころか、かえってますます勢い烈しく挑みかかった。
すると、次の瞬間、ああ、実に恐ろしい事が起こったのだ。神谷はその時のすさまじい光景を、いつまでも忘れることができなかった。