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けんのよんくんし

剣の四君子・日本名婦伝

吉川 英治

吉川英治『剣の四君子・日本名婦伝』。同一底本的分册已合并为一书。收入:剣の四君子、剣の四君子、剣の四君子、剣の四君子、日本名婦伝、日本名婦伝、日本名婦伝、日本名婦伝、日本名婦伝、日本名婦伝。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 150,635 字 · 306 页

青空文庫

実際、泥舟に取っては、それも一つの悩みであったのである。

英子は、鉄太郎と結婚した。鉄太郎と泥舟とは、こうして義兄義弟の間となった。鉄太郎も以後は鉄舟と記してゆこう。

「聞けば貴公は、まだ九歳の頃、十五歳の兄紀一郎殿を、一撃に突き負かしたというではないか。そうした勇猛心のある貴公が、近頃は何たる女々しさだ。これしきの悲嘆、これしきの逆境に負けてどう召さる。門人に対してだッて見っともない」

義の兄弟となると、鉄舟はなおさら、歯に衣着せずずけずけ言った。泥舟も励まされては道場へ出て門人に接した。当時その門には、松岡万、関口隆吉、大草多喜次郎、中条金之助などの錚々たる人々が集まっていた。

安政二年の暮に幕府は、泥舟を勘定奉行下の一会計吏に任命したが、翌年はすぐ、適材でないとして、幕府講武所の槍術教授を申し付けた。また将軍直属の親衛軍の内へも加えた。

多忙になった。愁える間もない体になった。けれど性来の多感と情熱は彼を去ったわけでない。人にこそ云わないが彼の胸中にはたえず亡き兄の静山に対する恋々な慕情が熄むべくもなかった。

安政の四年、泥舟が明けて二十三歳となった年の二月の一夜だった。