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けんのよんくんし

剣の四君子・日本名婦伝

吉川 英治

吉川英治『剣の四君子・日本名婦伝』。同一底本的分册已合并为一书。收入:剣の四君子、剣の四君子、剣の四君子、剣の四君子、日本名婦伝、日本名婦伝、日本名婦伝、日本名婦伝、日本名婦伝、日本名婦伝。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 150,635 字 · 306 页

青空文庫

北条氏が強権を執った頃、いちど敗れて一族離散したこともあったが、後にまた、本領を回復し、後醍醐天皇が笠置山に行幸遊ばされて、官軍を召し募られた折には、柳生一族からも、中之坊という勤皇僧が出て、笠置衆徒に列し、正成の帷幕に参じ、建武の復古によく働いた。

――そんな話も、宗厳は、御先祖の事績として、幼い時からよく聞いていたものである。

玄関前の巨きな杉。槇の喬木。

そこらの苔や草。

老仙のごとき磐石。石を縫うささ流れ。

みな、それからの物であった。

宗厳は今、そこに立って、坂の下から上って来る伊勢守と一行の者を待っていた。

「おお……奈良はあの森よな。月ヶ瀬は、南の方か。ああ暢びやかな」

客の一群れは、悠長であった。坂の途中の曲り角に立ちどまって、大和の春の昼霞に恍惚と眼を細めていたり、辺りの老梅の半開の花を愛でたりしていて、なかなか上って来ないのである。

――が、やがて、此方へ足を向けると、伊勢守らしい先なる人物が、

「あれに佇んでおられるのは御主人であるか」

と、傍らの柳生家の者に訊ねていた。

宗厳の家臣が、

「左様にござりまする」

と答えると、伊勢守は、非常に恐縮した様子で、やや足を早め、真っすぐに宗厳の前まで来て挨拶した。