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けんのよんくんし

剣の四君子・日本名婦伝

吉川 英治

吉川英治『剣の四君子・日本名婦伝』。同一底本的分册已合并为一书。收入:剣の四君子、剣の四君子、剣の四君子、剣の四君子、日本名婦伝、日本名婦伝、日本名婦伝、日本名婦伝、日本名婦伝、日本名婦伝。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 150,635 字 · 306 页

青空文庫

「…………」

「で。それがしに対し、また父の如水に対しても、再三の御懇望なのでござる。――ぜひ一度、召連れて参るようにと」

「…………」

「折ふしこの度は、大坂城、聚楽、洛内などの、地震御見舞として、関東より上られ、ここしばらく、京都紫竹村の鷹ヶ峰に、王城御警固の任につかれ、野津の仮屋におられましたが、いよいよ、近日には関東へお帰りとあって、一しお御催促が急なのでござりまする。――枉げて、御苦労には存じますが、京都までお運び下さいますよう。長政の面目も立ちまする。かくの通り、おねがい申しあげます」

「…………」

老龍――柳生谷の老龍――近ごろ誰となく宗厳のことを世人はそうよんでいる。深淵の潜龍という意味か、蛟龍の池にひそむは伸びんがためというところか、とにかくそう称されている彼は、

「……さて」と、口のうちで呟いたまま、久しい間、秋の空に眼を放ったまま、考えこんでいる面持であった。

その眼を、ふと地に落すと、そこには土けむりを浴びて、哀れな家士や孫たちが、汗みどろに働いていた。彼の眸は、不愍にうごかされた。涙を溜めないばかりであった。

「長政どの」

「はっ」

「参ろう。