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けんのよんくんし

剣の四君子・日本名婦伝

吉川 英治

吉川英治『剣の四君子・日本名婦伝』。同一底本的分册已合并为一书。收入:剣の四君子、剣の四君子、剣の四君子、剣の四君子、日本名婦伝、日本名婦伝、日本名婦伝、日本名婦伝、日本名婦伝、日本名婦伝。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 150,635 字 · 306 页

青空文庫

「すべて戦時下の心得であること」

を、陣中の法規として、自身も日中は物具すら解かなかった。

日盛りの木陰に、軍馬も懶げに瞼をふさいでいた。蝉しぐれは、耳を聾するばかりである。

「やれやれようやく辿り着きました。老先生、どうか駒を降りて、暫時、木陰でお涼みください」

黒田長政は、そう云って、陣門の傍らに師の馬を曳きよせた。

石舟斎は、鞍の上からそっと降りた。従いて来た四男の五郎右衛門、五男の宗矩、孫の兵庫の三人は、

「おつかれでございましょう」

と、各※(二の字点、1-2-22)、側へ寄って、老体の石舟斎を劬った。

長政は、その間に、

「すぐ戻って参りますから」

と、断って、陣中へはいって行った。もちろん家康へ取次ぐためであった。

間もなく引っ返して来ると、

「どうぞ」

と、改めて、長政は自身、案内役に立って、柳生家の人々を、営内へ導いた。

木陰木陰に幕舎がある。整然とした中にも、将士の笑いさざめきなどが洩れてくる――家康のいる仮屋は、林の小道をだいぶ歩いてからであった。翠を映して、葵の紋幕が、涼やかにうごいている。

鷹ヶ峰から落ちてくる水音がせんかんと耳を洗う。