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ちきゅうはっきょうじけん

地球発狂事件

海野 十三

「協力新聞」1945(昭和20)年9月1日~1946(昭和21)年(終号未詳)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 86,306 字 · 173 页

青空文庫

ドレゴ記者は、エミリーを毎日のように慰問に来るが、来るたびにエミリーに泣き縋られてほとほと閉口の形だった。といってエミリーの片恋を知った以上、そのままに放っておけない。彼は進まぬ足を引摺るようにして、エミリーを慰めに現われるのだった。

そのドレゴが、或る日いつもよりは明るい顔で、エミリーの許を訪れた。エミリーはサンノム老人の下宿の勝手許から、白いエプロンで手を拭きながら出て来た。早くも彼女の手には、ピンク色の絹のハンカチーフが丸まって握りこまれていた。

「やあ、エミリー。今日は珍しい人から手紙が来たよ」

「あら、うれしい。水戸さんから……」

「何でも皆、水戸の話だと思っちまうんだね。違うよ。水戸から手紙が来たんだったら、すぐ電話をかけるよ」

「まあ、つまんない。じゃあ誰から」

「ケノフスキーからだ。モスクワから出した手紙なんだ。これは僕が、約束しておいた手紙なんだ」

「……」

「ほら、これだがね。これを読むと、また面白いことになって来たよ」とドレゴは封筒から出した用箋をひろげながら「こういうことが書いてある。読んでみるよ。――“ゼムリヤ号事件は、まことに不幸な出来事ではあったが、一面から考えると、それはわれらのために全然マイナスではなかった。