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ちきゅうはっきょうじけん

地球発狂事件

海野 十三

「協力新聞」1945(昭和20)年9月1日~1946(昭和21)年(終号未詳)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 86,306 字 · 173 页

青空文庫

早くせんか、この黄色い南瓜の君よ」

「これは済まぬことをした。待っていてくれ、急いで支度をするから……」

水戸は何事とも知らないが、やっと事態の重大性を呑み込めたと見え、それからは室内をこま鼠のようにくるくる走りまわって登山の支度に取り懸った。

「食糧はある。君の大切にしている君の国の酒の壜だけは忘れないように」

「おう、合点だ」

猶予時間を十分間まで使わないで水戸はドレゴの操縦する車の中へ乗りこんで、彼と肩を並べた。車は走りだした。こんどは猛烈な速度で、ヘルナーの登山道をどんどん飛ばした。何にも知らない漁師や農夫が、危くはねとばされそうになって、車のあとへ呪いの言葉を投げつけた。

「一体どうしたのか。前代未聞の大事件というのは……」

水戸はドレゴの脇腹を小突いた。

「おお、そのことだ。言葉で説明する前に、まず君の目で見て貰った方がいいだろう。ヘルナーの頂に注意して見給え」

「なに、ヘルナーの峰を見ろというのか」

水戸は、きっとなって、顔を風よけの硝子の方へ近づけると、首をねじ曲げてヘルナーの峰を探した。

「ここらの連中と来たら呑気すぎるよ。僕が発見してからもうかれこれ三十分になるのに、誰も気がついていないのだから……」