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ちきゅうはっきょうじけん

地球発狂事件

海野 十三

「協力新聞」1945(昭和20)年9月1日~1946(昭和21)年(終号未詳)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 86,306 字 · 173 页

青空文庫

なるべく早い方がいいが、しかしまだ周章てることはない」

「ふうむ、それもそうだな」とドレゴは、ようやく気を取直した。

「無線機の用意はすっかり出来ているよ。さあ、今こそ君は光栄ある報道者として、この驚天動地の怪事件の第一報を、最も十分なる表現をもって全世界に放送するのだ。ハリ、原稿を書くがいい」

「うむ。よし。書くぞ」

ドレゴは、紙を出して、その上に鉛筆を走らせ始めた。彼の額には血管が太く怒漲し、そして彼の唇は絶えずぶるぶると痙攣していた。

「第一報は、簡潔なのがいいぞ。しかし驚天地異の大報道であることについて遺憾なく表現すべきだ」

水戸は傍から友誼に篤い忠言を送った。ドレゴは、無言で肯いた。

「これでどうだい」

ドレゴは紙片を水戸の方へ差出した。彼の声は明るく、そして大興奮に震えていた。

「やっ、これは書いたね。“汽船ゼムリヤ号は突然発狂した。何月何日の深夜、この汽船は発狂の極、アイスランド島ヘルナー山頂に坐礁した。そして目下火災を起し、炎々たる焔に包まれ、記者はあらゆる努力をしたが、船体から十メートル以内に近づくことが出来ない。この前代未聞の怪事件は、本記者の如く、自らの目をもって見た者でなければ到底信じられないであろう。