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ちきゅうはっきょうじけん

地球発狂事件

海野 十三

「協力新聞」1945(昭和20)年9月1日~1946(昭和21)年(終号未詳)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 86,306 字 · 173 页

青空文庫

自然彼は、町の酒場を歴訪するのがその日その夜の重大な仕事であった。新聞記者としての収入をあてにせずともよい豪家の長男坊のことだから、どこの家でも彼はちやほやされた。が、彼はちやほやされればされるほどそれが気に入らず、口にまで出していわないが、胸の中でむしゃくしゃしていたのである。

そういう生活の中に、彼が話相手として或る程度の満足を得られる友人が一人だけあった。それは先にも名前をちょっと出したが、日本人記者で水戸宗一という三十歳ばかりの背の低い色の黒い男であった。

例の事件を発見する日の前夜、ハリ・ドレゴは水戸を引張りまわして町中を飲み歩いた。この日二人の間には珍らしく議論が沸騰したのである。それは「この世は神が支配し給うか。それとも悪魔が支配しているか」という問題だった。水戸は「もちろん神々によって支配されたる有難い世だ」と言ったのに対し、ハリ・ドレゴは「いや違う。この世は今や九百九十匹の悪魔と、僅か十人の神様とによって支配されているのだ。その生残りの神様も遠からず、この世から追放されてしまうであろう」と心細いことを主張して譲らなかった。水戸はドレゴの説をくつがえすために、色々と事実をあげて反駁した。