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ちきゅうはっきょうじけん

地球発狂事件

海野 十三

「協力新聞」1945(昭和20)年9月1日~1946(昭和21)年(終号未詳)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 86,306 字 · 173 页

青空文庫

おお、吾々は気が確かであろうか。吾々は夢を見ているのではなかろうか。夢でなければ今我々は生命の危険に瀕しているのだ。どうしたら、それから免れることができるだろうか!

その中に、さすがワーナー博士は誰よりも落ち着きを保持していた。博士は、サンキス号の観測室から、同じ船に坐乗している護衛艦隊の司令ペップ大佐に対し、適切にして明快なる指令を発した。

「ペップ司令、われわれは即時トップ・スピードでこの海底地震帯から脱出しなければならぬ。但し駆逐艦二隻は、しばらく現場に停り、不幸なる駆逐艦D十五号の遺留品を出来るだけ多く収容したのち、速やかにわれわれの跡を追うように取計られたい」

この指令を、高声器から受取った司令ペップ大佐は愕然と正気に戻った。この司令はさっきからずっと船橋の展望硝子戸を通して海上の恐ろしい惨劇に魂を奪われていたのだった。

「御尤も。直ぐ発令します、ワーナー団長」

二分間ほど間をおいて、ワーナー博士のところへ司令から報告があった、司令は博士の指令を実行に移したと。その頃にはサンキス号も際どい急回頭を終わっていた。先刻までは右舷から差し込んでいた夕陽が、今は反対に左舷から脅かすような光を投げこんでいる。