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ようちゅう

妖虫

江戸川 乱歩

「キング」大日本雄弁会講談社、1933(昭和8)年12月~1934(昭和9)年10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 120,290 字 · 239 页

青空文庫

フフフ……」

探偵は注意深く、決して大きな声を出さなかった。

「では、さい前、あんなに苦悶されたのも、……」

「ウン、ウン、あれが実は今晩のお芝居のクライマックスでね。君は丁度よい所へ来合せたというものじゃ。イヤ、失敬失敬。ところで、君はさっき、わしが大騒ぎをやっている最中、あの窓の外を見なかったかね」

アア、やっぱりそうであったのか。

「エエ、見ました。誰かが覗いていたのでしょう。あいつの正体を御存知なのですか」

「ウン。知っている」

「若しや……」

「その通り、赤蠍じゃ。恐らく青眼鏡の部下の奴じゃ」

「どうしてこの庭へ入って来たのでしょう」

「そんなこと、あいつらには朝めし前の仕事じゃろう。塀をのり越すなり、図々しく表門から入り込んで、裏手へ潜入するなり」

「そうまで分っていたら、なぜあいつを捉えなかったのです。僕もお手伝いしましたのに」

「肝腎の張本を逃がしてしまうからさ。やッつける時には、一網打尽じゃ。今はまず、奴等の罠にはまったと見せかけ、油断をさせておけばいいのじゃ。あいつ、このわしが余程邪魔になると見えて、毒殺しようとしおった。わしはその毒にやられた体に見せかけて、瀕死の病人を装っているのだよ。