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ようちゅう

妖虫

江戸川 乱歩

「キング」大日本雄弁会講談社、1933(昭和8)年12月~1934(昭和9)年10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 120,290 字 · 239 页

青空文庫

あいつ、今晩あたりきっとわしの様子を見に来ると思ったので、それを待ち構えて、さっきの大げさなお芝居を演じて見せたという訳なのじゃ」

「じゃ、何か毒のある品物を送って来たというのは本当なのですね」

「ウン、本当だ。わしはすんでのことに、やられる所じゃった」

「アア、それで思い出しましたが、僕も実は、新しく起った事件を御知らせに来たのですよ」

守は騒ぎにまぎれて、つい忘れていた桜井家の出来事を思い出した。

「第三の犠牲者のことかね」

探偵は、待構えてでもいた様に、図星を指すのだ。

「そうです、併し、あなたはどうしてそれを、……」

「桜井のお嬢さんじゃろうが」

余りのことに、守はこの名探偵の藍色の顔を見つめたまま、二の句がつげなかった。

「ハハハ……、それを知らん様では、探偵とは云われん。驚くことはないよ。四五日前から、わしは毎晩この病院を抜け出して、東京中をうろつき廻っていたんだからね。赤蠍の奴が次に何を企らむか位は、ちゃんと目星がついているのさ」

「今度は未然に防げましょうか」

「ハハ……、気掛りと見えるね。君はあのお嬢さんとは仲よしだったね。大丈夫、今度こそわしが引受けた。