轻松读懂日语经典作品
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ようちゅう
妖虫
江戸川 乱歩
「キング」大日本雄弁会講談社、1933(昭和8)年12月~1934(昭和9)年10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 120,290 字 · 239 页
あれは張ぼての岩だったけれど、何かを包み隠している点で、やっぱり一種の箱と云ってもいい。その箱の中から、短剣が飛出したのじゃ。丁度今この秘密函から蠍が飛出した様にね。どうだね。こう考えて来ると、今度の犯人には、箱というものが、不思議につき纒っているじゃないか。これは一体何を暗示していると思うね」
探偵は、非常に真面目な表情になって、じっと守青年を見つめた。
「なる程、おっしゃれば、そうですね。そう聞くと、何だかひどく不気味な気がしますけれど、僕にはその意味がよく分りません」
「イヤ、わしにもハッキリ分っている訳ではない。じゃが、その箱に包み隠されているものが、どうやら、この犯罪の根本原因を為している様に思われてならぬのじゃ。若し、わしの想像が当っているとすると、これは実に容易ならぬ事件だよ。前代未聞と云ってもいい。だが、それ程の邪悪の魂が、果してこの世に存在するものだろうか。想像も出来ない。アア、何という気違いだ。何という悪魔だ」
白髪白髯の名探偵は、我れと我が言葉に、段々昂奮しながら、つい知らず声高になって行くのであった。
螯が! 螯が!
妖虫殺人団が第三の餌食と狙う桜井品子さんは、富豪代議士桜井栄之丞氏の一人娘で、死んだ珠子と同じ女学校の卒業生、珠子よりは二年上級のお姉さんであった。