轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
ようちゅう
妖虫
江戸川 乱歩
「キング」大日本雄弁会講談社、1933(昭和8)年12月~1934(昭和9)年10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 120,290 字 · 239 页
事務員は今度こそ、心底からびっくりしないではいられなかった。
「蠍だ! 赤い蠍だ!」
しかも、並々の蠍ではない。千倍万倍に拡大して、人間程の大きさを持った、化け蠍であった。
タ、タ、タ、タ、……丁度その時、一人の足袋はだしの新聞配達夫が、うしろから走って来て、何の気もつかず、彼を追い抜いて行こうとした。
「オイ、君、ちょっと待ち給え」
事務員は配達夫を呼びとめて、さも恐ろしそうに、怪物の方を指して見せた。
「ワーッ、何だい、あれゃ?」
若い配達夫は、ギョッと立止って、臆病を隠すように、頓狂な声を揚げた。
「よく見給え。あれは蠍という毒虫の形をしているじゃないか」
「エッ、蠍ですって? アア、そうだ。真赤な蠍だ」
二人は脅えた目を見合せて黙ってしまった。彼等はこの頃世間を騒がせている、恐ろしい殺人鬼の紋章について、知り過ぎる程知っていたからである。
ふと見ると、Sビルディングの小使の爺さんが、何気なく入口に現われて、そこの石段を降りようとしている。
「いけない、おじさん、そこをごらん。変なものがいるぜ」
配達夫が大声に叫んだ。
小使は注意されて、ヒョイと目の前を見ると、びっくりして、いきなり入口の中へ二三歩逃げ込んで行ったが、やっと踏み止まって、遠くから及び腰に、怪物の姿をじっと眺めた。