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ようちゅう

妖虫

江戸川 乱歩

「キング」大日本雄弁会講談社、1933(昭和8)年12月~1934(昭和9)年10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 120,290 字 · 239 页

青空文庫

「三時には、品子さんが殺されるのです。それも皆さんの目の前でですよ」

殿村夫人は、血走った目を、悪念に燃え立たせ、果合をする様な調子であった。

「目の前? ハハハハハハ、何を云ってるんだ。ここには品子なんぞいやしないじゃないか。そんな馬鹿なことが起ってたまるものか」

桜井氏が、蒼ざめた顔で虚勢を張った。その実、彼は殿村夫人が犯人であったという意外千万な事実にうちのめされ、品子さん殺害の予告も、何か奇想天外なやり方で、実現されるのではないかと、内心はビクビクものでいたのだけれど。

「ホホホホホ、あなたはそれがごらんになりたいのでごさいますか。お嬢さまの無残に殺される有様が。……では、お目にかけましょう。三笠さんも、皆さんも、私のあとへついてお出でなさいませ、イイエ、決して逃げたりなんかしやしません。私だって、それが見たいのですもの。……無論このお邸の中ですのよ」

殿村夫人は、あっけにとられている人々を尻目にかけて、ツカツカと応接室を出て行った。三笠探偵は飛びつく様に、夫人の左の手首を掴んで、逃げ出さぬ用心をしながらついて行く。一座の人達も、じっとしている訳には行かない。