轻松读懂日语经典作品
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ようちゅう
妖虫
江戸川 乱歩
「キング」大日本雄弁会講談社、1933(昭和8)年12月~1934(昭和9)年10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 120,290 字 · 239 页
アア、危ない。その葉巻には、どんな仕掛けがあるかも知れたものではないのだ。併し、それとも知らぬ操一氏は、嬉し相に好物の葉巻を受け取って、吸口を噛み破り、火をつけてしまった。
「如何ですな、わしの好みは」
「イヤ、実に結構です。騒ぎにまぎれて、ずっと煙草を吸わないでいたものですから、又格別の味いです」
車内には紫の煙が靄のように漂い、葉巻の先は刻々灰になって行った。
偽探偵は、煙草をふかし続ける操一氏を横目に注意しながら、死人のようにグッタリとクッションに沈み込んでいる珠子に、さも親切らしく、色々と慰めの言葉を囁いていたが、車が三十分も走った頃には、又しても彼女の柔かい手を取って、執拗に弄び始めた。
そぞろ心の珠子も、遂にはそれを悟らない訳には行かなかった。彼女の手に伝わる感触には、脅えた少女を力づけるというようなものではなくて、いやらしい一種の情熱があった。しかも更に異様なことには、それは決して老人のひからびた手ではなく、ニチャニチャと油っこい壮年者の手であった。
それとなく振りほどこうとしても、不気味な男の手は、吸盤でもついているように、変にからみついて離れぬばかりか、一層強い力で握りしめて来るのだ。