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ようちゅう

妖虫

江戸川 乱歩

「キング」大日本雄弁会講談社、1933(昭和8)年12月~1934(昭和9)年10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 120,290 字 · 239 页

青空文庫

では、もう一人の小男の方はと見ると、これはじっとそこに立っていたので、やや明瞭に見て取ることが出来たが、こうした悪者達のならわしでもあろう、やっぱり背広の襟と鳥打帽とで、顔を隠し、その上このちっぽけな男は、御丁寧にも、黒いスカーフで、丁度珠子の猿轡と同じ様に、鼻の上まで包んでいた。そして、鳥打帽のひさしとスカーフの間には、大きなロイド眼鏡がキラリと光っているのだ。

だが、懐中電燈の狭い光が照らし出したものは、この二人の男だけではなかった。珠子は同時に、彼等の背景を為している、打続く深い竹藪を見て取ることが出来た。彼等が動く度に、竹の葉がガサガサと鳴る音をも耳にした。

オヤ、変だ。今暗い建物の中へ担ぎ込まれたと思ったのに、では、やっぱりまだ外にいたのかしら。

それにしても、こんな町中に竹藪が続いているというのは、実におかしい。ひょっとしたら、さっきからの数々の恐ろしい出来事は、みんな夢なのじゃあるまいか。イヤ、今夜の事だけでなくて、そもそも赤蠍なんてお化けみたいな怪物が出現した最初からして、悉く長い悪夢のつづきなのではあるまいか。

珠子は闇の中の竹藪と、その前を影の様に動いている三人の悪党の異様さに、ふとそんな気やすめを考えたが、若しこれが悪夢であったとしても、その本当の恐ろしさは、まだまだこれからあと