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みやもとむさし

宮本武蔵(七)

吉川 英治

吉川英治『宮本武蔵(七)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:宮本武蔵、宮本武蔵。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 350,912 字 · 702 页

青空文庫

そちのような見知らぬ老いぼれに、父が居留守をつかう要はない。いないからいないというたのだ」

老婆の態度が新蔵をむっとさせたらしかった。その語気にまた、老婆は年がいもない怒りを駆りたてて、

「お気に障ったか。安房どのを父といわれたところを見れば、おぬしが当家の御子息じゃろが、先頃からこのばばが、いったい何度この門をくぐっておるかご存じかの。――五度や六度ではおざらぬぞよ。そのたびごとに留守じゃ。居留守と思うもむりではあるまいが」

「何度、訪ねたかしらぬが、父はひとに会うのを好まぬほうだ。会わぬというのに、無理に来るほうがわるい」

「ひとに会うのは好まぬと。片腹いたい仰せ言じゃの。ではなぜ、おぬしの父は人中に住んでおざるのじゃ」

お杉ばばはまた、いつもの歯を剥きはじめて、きょうこそは会わぬうちは帰りそうもない顔つきなのであった。

二

てこでも動かないという俗言がある。ばばの面構えはそれであった。

老婆と思って見くびる――という共通のひがみが、お杉にもある。いや人いちばい強いほうだ。それゆえに、見くびられまいとする緊張が、てこでも動かない顔を拵えてしまうのである。