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みやもとむさし

宮本武蔵(七)

吉川 英治

吉川英治『宮本武蔵(七)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:宮本武蔵、宮本武蔵。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 350,912 字 · 702 页

青空文庫

役人小者たちは、どやどやと奉行所の門内にはいり、沢庵はなおしばらく、男女の俯伏している莚のそばに佇んでいたが、黙然と――何もいわずに、原をよぎって、彼方へ行ってしまった。

「…………」

「…………」

時雨雲の裂け目から、うすい陽が草にこぼれた。

人が去ると、鶉がまた啼く。

「…………」

「…………」

朱実も、又八道心も、いつまでもじっとうごかなかった。けれどまったく気絶してしまったわけではない。体じゅうは火みたいに痛んでいるし、また、天地に恥かしくて顔が上がらないのであった。

「……オ。水が」

朱実が先に呟いた。

自分たちの莚の前に、小さい手桶に竹柄杓が添えてある。この手桶は、笞で打ちすえる奉行所にも、一掬の情けはあるのだぞというように、無言の相を持ってそこにあった。

がぶっ……

かぶりつくように朱実は先にそれをのんだ。又八へすすめたのはその後からであった。

「……飲みませんか」

又八道心は、やっと手を伸ばした。ごくごくと水が喉を通ってゆく――。役人もいない、沢庵もいない、彼はまだわれに返りきらない面持だった。

「又八さん……おまえ坊さんになったのかえ」

「……いいのかしら?」