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「てらだとらひこのついそう」あとがき

寺田寅彦 わが師の追想

中谷 宇吉郎

中谷宇吉郎『寺田寅彦 わが師の追想』。同一底本的分册已合并为一书。收入:「寺田寅彦の追想」後書、実験室の思い出、墨流しの物理的研究、墨並びに硯の物理学的研究。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 31,239 字 · 65 页

青空文庫

墨の粒子の大きさ

墨の粒子の大きさ

まず最初に墨の粒子の大きさを測ってある。用いた墨は奈良古梅園の紅花墨で、市販の品である。あらかじめ墨の目方を精密に測っておいて、それを磨って墨汁が適当な濃さになった時、その墨をよく拭いて、また目方を測り、前後の差から、水に溶け込んだ墨の量をきめる。この時硯の中にあった水の量を測っておくと、墨汁の濃度を定量的に決めることが出来る。

このようにして濃度の分かった墨汁をつくり、その液の微量を、格外顕微鏡(5)で調べて、一定容積中の墨の粒子の数を算えるのである。前に濃度が定量的に分かっているのであるから、墨の比重からこの一定容積中の墨の実質の体積が計算される。それで墨の粒子を皆一様な大きさの球と仮定すると、体積と粒子の数とから、一つの粒子の大きさが計算出来るのである。

この実験の一例では、一立方糎の墨汁中にある墨の実質の量が1.6×10-5瓦(6)の濃度のものが用いられた。格外顕微鏡でかぞえた数は、一立方糎について15×109個であった。墨の比重としては1.4という普通の墨の価を用いた。もっとも微粒子になった時、もとと同じ比重をもっているか否かは分からないので、その点は少し不安であるが、ほかに方法がないので致し方がない。