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「てらだとらひこのついそう」あとがき

寺田寅彦 わが師の追想

中谷 宇吉郎

中谷宇吉郎『寺田寅彦 わが師の追想』。同一底本的分册已合并为一书。收入:「寺田寅彦の追想」後書、実験室の思い出、墨流しの物理的研究、墨並びに硯の物理学的研究。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 31,239 字 · 65 页

青空文庫

以上の実験結果の吟味

換言すれば酸の点○は硯の面の粗な方に相当し、アルカリの点●は硯の面が平滑な方と一致しているのである。故に酸の場合墨が速くおりるのは、墨からとけ出す粒子が大きい為であり、アルカリの場合はその逆になるということが分かったのである。この現象は膠質学の方面からも重要な問題である。

以上の実験結果の吟味

以上の実験で墨のおりた量Qとして測ったものは、硯の面上五糎の距離を墨が往復三千回した時の量である。墨のとけ方が終始一定と仮定すると、墨が一糎動いた間にとけ出た量はQ/3×10-4瓦となる。墨の磨り口をSとすると、墨が硯上を一糎動いた時に一平方糎からとけ出る量qは、

q=Q/3S×10-4瓦

となる。墨の密度をsとするとこの時とけ出た墨の体積はq/sである。このq/sの値がちょうど墨が一糎動いた時に磨り減る層の厚さhになる。今Qを一瓦、Sを二平方糎(第一表)、sを1.4とすると、計算によるhの値は120×10-7糎と出て来る。ところが第七図に於てQが一瓦の時のDは約100×10-7糎で、大体hと似た値である。即ち墨が硯上一糎動くと、約100×10-7糎(一万分の一粍)だけ削りとられ、その時墨はその削りとられた厚さと同程度の直径の粒子となってとけ出るということが分かるのである。