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「てらだとらひこのついそう」あとがき
寺田寅彦 わが師の追想
中谷 宇吉郎
中谷宇吉郎『寺田寅彦 わが師の追想』。同一底本的分册已合并为一书。收入:「寺田寅彦の追想」後書、実験室の思い出、墨流しの物理的研究、墨並びに硯の物理学的研究。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 31,239 字 · 65 页
木片の端で作った墨膜の孔
ところが数分経ってから第二の墨滴を落とすと、拡がり方が遅く、前の墨膜の途中まで行ったところで止まってしまう。そして両者の境界が判然とつくのである。即ち墨を重ねる場合には、前の墨は単に乾くということ以外に、墨の実質も変化していて、後の墨との間の融合の度合いに影響するということが分かったのである。
木片の端で作った墨膜の孔
以上の実験では、硝子棒の尖端に脂を微量につけて、それで墨膜に孔を作ったのである。この場合硝子棒の代わりに、木材の細い棒、例えば妻楊子の先でちょっと墨膜に触れても良いのである。木材の棒の場合は木質内の油脂が出て来て、墨膜に孔を作るのであるが、出来る孔の形は、前の場合のような円形に近いものとは著しく異なるのである。それは木質の顕微鏡的の繊維構造の中で、油脂を出す特別の繊維が少数あって、その繊維からだけ脂が射出されるので、第六図のような特殊の形の孔となるのである。脂を出す繊維は決まっているので、同じ棒を用いると、大体いつも同じ形の孔が出来る。この現象は画などの方とは直接の関係が無いかもしれないが、面白い現象である。案外植物の木質の研究の方面に応用があるかもしれない。