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「てらだとらひこのついそう」あとがき
寺田寅彦 わが師の追想
中谷 宇吉郎
中谷宇吉郎『寺田寅彦 わが師の追想』。同一底本的分册已合并为一书。收入:「寺田寅彦の追想」後書、実験室の思い出、墨流しの物理的研究、墨並びに硯の物理学的研究。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 31,239 字 · 65 页
陰極(-)に近い部分には、そのような傾向は認められなかった。
「第二図」のキャプション付きの図
第二図
墨膜が固化したことは、脂のついた針で孔を作ってみると、星状に割れることから知ることが出来た。第二図乙に示すように、陽極に近い部分には星状の割れ目が出来るのに、陰極に近い部分では円い孔になるということは、墨膜の表面張力が脂の膜の表面張力より大きい為に、中心部の脂が円形に拡がることを示している。従って墨膜はまだ液状を保っていることが分かる。この墨膜の固形化は、陽極に近い部分から始まり、漸次拡がって行って、一、二時間経つと墨膜全体が固形化してしまうことが分かった。それを見るには、電圧を加えてから色々な時間経過した後に、各点で割れ目を作って見れば良いのである。
ところが電極の銅板を白金板に変えて、同じ実験をくり返して見ると、このような墨膜の固化は起こらないのである。それでこの現象は電気分解によって、銅のイオン(7)が水中に溶け出し、それがコロイド粒子の凝集(8)を起こしたものとして説明出来るのである。
それで初めから水の中に銅の化合物を溶かしておいて、その上で墨膜を作って見たら、電圧を加えなくても固化が起こったのである。