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さこんのいかり
左近の怒り
「講談倶楽部 第六巻第九号~第一一号」1954(昭和29)年7月1日~9月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 47,454 字 · 95 页
そこへまたドヤドヤと音がして、一人の青年が二人の女をしたがえて駈けこんできた。青年はいきなり男の前にバッタのように頭をさげて、
「申訳ありません。若い女の電話にだまされまして、それに迎えの自動車が来たものですから、つい電話を信用しておびきだされてしまいました」
「どんな電話だ」
「旦那様方のお車が衝突して皆さんケガをなさったから全員至急有楽町まで来いというお電話でして、有楽町で降されまして、どこできいても衝突のあった様子がありませんので、さてはとさとりまして」
どうやら左近もさてはとさとった。女賊にだまされたらしい。左近はきいた。
「あなた方、門のクグリ戸をあけて入ってきましたね」
「当り前だ」
「クグリ戸があいたんですね」
「あかなければ入れない」
「してみると、女は逃げましたね。ボクらがクグリ戸から入ったとき、女はカンヌキをかけたんですから。仕方がない。警察へ電話をかけてボクをつかまえて下さい」
左近はあきらめよく云ったが、しかし腑に落ちないことが一ツあった。それはなぜ女が左近をつれてきたかということだ。泥棒なら誰にも顔を見せずに忍びこむのが当然だ。わざわざ人に顔を見せるとは変な話ではないか。