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さこんのいかり
左近の怒り
「講談倶楽部 第六巻第九号~第一一号」1954(昭和29)年7月1日~9月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 47,454 字 · 95 页
洋次郎のたのみ
手近かには、もうそれぐらいしか本がない。ほぼ諦めて習慣的に写真の顔を追っていた葉子が思わずアッ! と大きな声をだした。
「この人だわ! あんまり手近かなところだし、それにいつも和服の写真でしょう。だから分らなかったのよ!」
「手近かなところッて、近所の人?」
タコスケがせきこんできくと、葉子は高々と一同に綴じこみを示して、
「バクダン・メモ関係の綴じこみよ。その人の名は、玉子! バクダン・メモの花形芸者、玉子サンよ。絶対に、そうだわ。夏川さん、見てちょうだい」
左近はその写真をジッと見た。女の顔を見わけるのは苦手だが、十哩さきの潜水艦を見わけるコンタンと闘志をかためて睨みつづけた。フシギや、マンマンたる自信をもって鑑定に成功したのである。彼は静かに断定した。
「たしかに玉子にまちがいありません」
洋次郎のたのみ
四日すぎた。住田嘉久馬の再校がでないので、左近は用がない。けれども、葉子の身にもしものことがあってはとの懸念から、玉子や白雲荘のことは忘れることにしていたのである。商用の旅から戻った大竜は再校がでないのに業を煮やして、しきりに電話で催促するがラチがあかない。