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さこんのいかり
左近の怒り
「講談倶楽部 第六巻第九号~第一一号」1954(昭和29)年7月1日~9月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 47,454 字 · 95 页
再び緑の自動車
自分がそッと身をひけばオカはナギの海のように静かになるのである。
再び緑の自動車
ところが翌朝意外にも吉野大竜は早々とつめかけて、それ出動だと大そうなハリキリようである。左近はこれが東京最後の朝飯と冷たいメシにミソ汁をぶッかけて食っているところであった。
「まだ葉子さんもタコスケも来ていませんよ」
「どうせ二人は留守番だ」
「西江洋次郎という葉子さんの兄さんが訪問しませんでしたか」
「アア、来たとも。その男だよ、オレを怒らせたのは。タンカをきってやったんだ。やせても枯れても吉野大竜、ギャングの脅迫で仕事をやめるようなチンピラじゃアねえや、とな」
「そんなに偉いんですか」
「偉いとも。はばかりながら密輸船のアンチャンを失望させるような吉野大竜ではないね」
大竜は左近の朝飯をせきたてて、二人はただちに氏家印刷へ向った。それを見とどけてソッと姿を現したのは葉子とタコスケ、二人の後姿を見送っていつまでも大笑いだ。そのはずである。昨夜二人は外へでると大至急円タクを拾って、洋次郎に先まわりして大竜を訪ね、洋次郎の企みを拒否させたのだ。大竜は小心ヨクヨクたるところもあるが、オッチョコチョイの勇み肌もあって、小さいのや女の子におだてられても気をよくしてのぼせあがる性分だった。