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さこんのいかり
左近の怒り
「講談倶楽部 第六巻第九号~第一一号」1954(昭和29)年7月1日~9月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 47,454 字 · 95 页
追われる女
しかし浜の人たちに上乗の東京ミヤゲができそうだ。と考えて、彼自身もまんざらでない気持であった。
追われる女
翌朝、タコスケの書いた地図をたよりに左近は都心をはなれた氏家印刷会社へでかけた。住田嘉久馬のバクダン・メモの出版についてはそもそも印刷所に寝返りをうたれて弱ったのである。いったん引きうけても、翌日か翌々日になると、ほかの仕事の都合でと急にことわりを云ってくる。おどされたり買収されたりするのである。親しかった印刷所がみんなその始末であった。やっと引きうけてくれたのが、氏家印刷だ。しかしこれもいつ寝返りをうつか分らない。左近の仕事は刷りあがるまで泊りこんで督促することであった。
タコスケの分りにくい地図をたよりにどうやら到着してみると、小ヂンマリした印刷所で二十人ばかりの若い者がガッチャン/\働いている。刺を通じると印刷インクだらけの工員が現れて、
「ぶん殴られずに来たらしいな。まア、はいれ」
「社長にお目にかかりたいのですが」
「オレが社長だよ。アッ! キミは夏川左近じゃないか」
「エ? あなたは?」
「忘れたかい」
「いえ、インクだらけで見当がつきませんよ。