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さこんのいかり

左近の怒り

坂口 安吾

「講談倶楽部 第六巻第九号~第一一号」1954(昭和29)年7月1日~9月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 47,454 字 · 95 页

青空文庫

彼はウロンげに目を光らせて、

「葉子の話とは食いちがうようだが、その女こそ敵の親分的存在かも知れないね。葉子が女に連れ去られるについてはボクが時間におくれる必要があるだろう。マスターの奴、七時四十五分までボクに留守番させたのは女の方とレンラクがあってのことにきまってる。銀座のキャバレーなんてのは白雲荘的な伏魔殿と密接なレンラクがあるのが当然なんだ。ボクだって仲間にたのまれて、それに似たことは、やりつけてるんだよ。第一、左近クンの話の様子では昨夜の女が白雲荘へ行けるはずはないじゃないか。白雲荘の女主人なんて大ウソだ。あるいは女主人かも知れないが、彼女が女主人なら、昨夜白雲荘のアルジを自称した連中とグルでなければ話が合わないよ。女の顔をボクが見れば化けの皮をはいでやることができるかも知れないが、しかしだね、ウチのマスターをうごかすことができるような組織だと、とてもボクくらいじゃ歯がたたない相手らしいね。そしてタクラミの根が意外に深く大きいらしいよ。左近クンに金庫を爆破させて盗み取ろうとした物はよほど重大な何物かだね。タコスケがあんな慌てて駈けこまなければ千葉ウジが相当に具体的な何かを左近クンにもらしたかも知れないが、事情が事情だからタコスケを咎めるわけにもいかないがね」