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さこんのいかり
左近の怒り
「講談倶楽部 第六巻第九号~第一一号」1954(昭和29)年7月1日~9月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 47,454 字 · 95 页
たまりかねて住田嘉久馬に面会を求めたけれども、居所が分らぬという返事である。住田の事務所へ押しかけて行ったが、ここでも居所不明という返事にすっかり腹を立てて、
「明日は自分らで再校して紙型をとっちまうんだ。遊んでたんじゃ商売になりゃしない。明日から出動だぜ」
と一同に云いのこして去った。それから葉子が夕食をこしらえる。三人で食事を終えてから葉子はタコスケの家へ帰るのだ。なぜなら、一件以来、葉子はタコスケの家へ泊ることになったからだ。
葉子らと入れちがいに顔をだしたのは葉子の兄の洋次郎であった。
「キミにたのみがあって来たんだけど、キミ、海へ戻ってくれないかなア」
左近に顔を見つめられると、彼は困って、うちしおれた。
「キミが東京にいると、困ったことになるんだよ。ボクは脅迫されてるんだ。キミを海へ帰しゃいいんだよ。さもないと、次から次へもっと困ったことを脅迫されるのでね。妹の身にも危険が及ぶかも知れない。キミさえ東京から立ち去れば、万事すむんだよ」
「ワケがわからないね」
「ワケなんかわかってくれない方がいいんだよ。ボクにもワケはわからないが、この命令はのッぴきならぬものなんだ」