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さこんのいかり
左近の怒り
「講談倶楽部 第六巻第九号~第一一号」1954(昭和29)年7月1日~9月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 47,454 字 · 95 页
氏家太郎は二人を迎えて、
「ちょうどよいところへ来てくれましたね。実はボクの方からお訪ねするつもりでいたのですがね。実はね。今朝はやばやと妙な女が来ましてね。ジャンパーを着て、こんな男がここにいないか訊くんですが、それがつまり、夏川君、キミらしいんだ。変だと思ったからそんな男はいないと追い返したんだが……」
「二十二三の美人で、洋装……」
「イヤ、そうじゃない。顔も洗わずにとびだしてきたような三十ぐらいの薄汚い女なのだ。なんの用だときくと、この新聞を見せてね、このジャンパーの男を探してるんです、玉子さんの家の者だと云うんだね」
氏家がとりだして見せたのは例の夕刊だ。彼は左近を見つめて、
「キミ、こんなことをしたのかい。住田嘉久馬にでも頼まれて荒仕事をやったのかとボクもつい思ったのだが」
「話がアベコベなんですよ。実はこれこれで逆にボクが白雲荘というところへ連れこまれたのです。そのあげくに――」
と左近は二日にわたる怪事件、ならびに昨夜、洋次郎がきて東京をひきあげてくれと頼まれたことに至るまで語りあかしたのである。
「玉子がキミを知るはずがないじゃないか」
「その通りです」