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さこんのいかり
左近の怒り
「講談倶楽部 第六巻第九号~第一一号」1954(昭和29)年7月1日~9月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 47,454 字 · 95 页
マスターの曾我は支那でもこの商売をやってた男だが、そんな面影は見られない。商人のように如才がなくて、人ざわりがやわらかだ。だから使用人が荒々しくゾンザイに話しかけ、主人がやわらかく優しく答えるようになるが、この商売では結局やさしく押える方がキキメがあるのだ。使用人たちは荒々しくゾンザイに甘えているようなことになる。
洋次郎は曾我のついでくれたハイボールを一息にのみほして、
「ボクは今朝も朝っぱらから女房を叩き起しましてね。氏家印刷へジャンパーの男をさがしているようなフリをさせて行かせたのですよ。夏川左近は根が素直な荒海育ちの男ですから、納得できればおとなしく東京を出て行くのです。ただ奴を納得させることができないでしょう。仕方がないから、いろいろ手をうっているのです。女房の奴、朝ッぱらから叩き起されて大立腹でしたが、手を合さんばかりに頼みこんで変な芝居をさせてみたり、ボクもまさに必死ですよ。これだけボクがやってるのに、頃合を見はからって夏川を口説き直しに出かけてみれば、葉子がさらわれたあとじゃありませんか。どこへ隠したんですか。たった一人のボクの可愛い妹ですよ。