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さこんのいかり
左近の怒り
「講談倶楽部 第六巻第九号~第一一号」1954(昭和29)年7月1日~9月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 47,454 字 · 95 页
この一物が紛失すれば、小菅の大物全部が無罪放免なんだよ。メモの出版がもしも世論を喚起するとすれば、この一物がどうなったかという一点に於てだ。メモの出版が多少怖れられるのもその理由によってだけなのさ」
葉子は腰がぞくぞくふるえるような緊張を感じた。やっぱり、そうだ。あの別荘の金庫を爆破して夏川左近に盗みださせようとしたのはその秘密書類だ。そして夏川左近が犬に噛み殺されてしまう。そして秘密書類の行方はそこからとぎれて不明になってしまう。すると一億五千万円は夏川左近の命の値段のようなものだ。愛するが故に葉子の思念はこう働いた。愛の直感だ。
自分の金庫を爆破させて、自分の物を盗ませる。それは常識ではとうてい見当がつかなかったが、一億五千万という金の動きの介在によってその奇怪な謎がフシギなものではなくなるのである。
海から来たばかりの左近を敵方の者が姓名まで知ってるというのは奇抜でありすぎる。住田嘉久馬なら吉野大竜からのレンラクで知っていた。白雲荘も実は住田のイキのかかった人物の別宅であるというし、玉子は今では住田の二号であるという。さすれば全ての謎がほぼ解けるではないか。