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さこんのいかり

左近の怒り

坂口 安吾

「講談倶楽部 第六巻第九号~第一一号」1954(昭和29)年7月1日~9月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 47,454 字 · 95 页

青空文庫

住田らの卑怯な約束通り、あなたの手に渡り、正しい扱いをうけて天下に公表されることを祈っております。せめてもの罪ほろぼしにお手伝いさせて下さい。私がお手伝いしなければ金庫は開きません。住田はどんなゴーモンをうけても金庫の開け方を口走るはずはないのです」

玉子の目には真情があふれていた。のみならず、その真情を伝えるために媚びている目ではない。むしろ左近の本心を見誤るまいとするために全力をつくした目であった。そして本心を見とどけた目だ。信じきった目であった。左近はそれを理解した。

「住田の部屋はどこですか」

「二階のちょうどこの反対の側に当る突き当りです」

「住田とあなたのほかには女中三名だけですか」

「ほかに犬が十六頭。とても泥棒ははいれません。この犬を怖れずに邸内へ侵入できる人は自分の正しさに自信のある人だけですわ。私はビックリしました。しかし、それに気がついて、あなたを信じもしましたし、尊敬もしました。女中は私がこの部屋へ呼び集めて、あなたのお仕事が終るまで外へだしません。金庫をあける時に私を呼びにいらして下さい」

玉子は呼鈴を押して階下から二名の若い女中を呼びよせ、自室のカギを左近に渡して、