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ふくいんさつじんじけん

復員殺人事件

坂口 安吾

「座談 第三巻第六号~第七号、第四巻第一号~第三号」1949(昭和24)年8月1日~9月1日、1950(昭和25)年1月1日~3月1日(未完)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 96,621 字 · 195 页

青空文庫

「イヤ、違うね。陸橋はもっと町に近い方で、現場から倉田家へ行くには通らないね」

「すると、蛸重先生がそこに立小便していたことは、彼にとって有利ですな」

「まア、そうだろう」

巨勢博士はニヤニヤして、

「モトの証言によると、蛸重先生は殆ど身の危険を脱していますな。しかし、モトの証言以外に、蛸重が陸橋のたもとで立小便していたことを証明するものはありません。モトは蛸重の女房です。人を見る。それは樹の如きものの歩くが見ゆ、か」

巨勢博士はニヤリと笑って、私の困るのがたのしいような憎らしい顔をした。

附記 長らく休載して、すみませんでした。読者から、種々お問合せをいたゞいて、御愛読のほど恐縮、感謝いたしております。まだまだ事件は発端で、これから、たくさん殺される人が現れますから、あせらず、慌てず、落付いて読んで下さい。慌て者の探偵に犯人は捕りません。

不連続殺人事件に一等の解答をよせた片岡輝夫というのは下宿の子供の名をかたった変名で、実際は大坪秀二という若い物理学者ですが、三万円はたしかにチョウダイ致したいから、先に下さい、という脅迫状をよこしました。この大坪探偵、ニュートン、アインシュタインの流れをくむ理論物理学専攻の由ですが、こう敵をあなどるようでは大成オボツカない。