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ふくいんさつじんじけん
復員殺人事件
「座談 第三巻第六号~第七号、第四巻第一号~第三号」1949(昭和24)年8月1日~9月1日、1950(昭和25)年1月1日~3月1日(未完)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 96,621 字 · 195 页
「あなたは安彦さんが公一兄さんを殺した犯人だと仰有いましたね」
「きまってるさ」
「なぜでしょう」
「殺人事件にきまったものを、自殺だなんてね。彼安彦氏はそう言う必要があったんだろう」
「それだけの理由ですか」
「キミ、ボクシングはどう拳を握るか知ってるかい。かならずオヤユビを外へだして握るものさ。素人はオヤユビを内側へ握るが、あれで強くブン殴ってごらんよ。オヤユビが骨折するぜ。オレは見て知っていたんだ。あの夕方、箱根口の方から歩いてきた安彦氏はオヤユビをさすっていたぜ。ネエ、キミ、オレはそのころから、ボクシングを稽古していたから、拳に対しては常に正確冷静な観察者だよ。彼氏、オレと顔を合せると、オヤユビをもむのをやめて何食わぬ顔で、肩をならべて陸橋をわたって家まで来たが、その後も彼はオヤユビがなんでもないようなフリをしていたが、オレの目をごまかすことは不可能さ。彼安彦氏はなぜオヤユビをいためたか」
「さすが。さすが」
巨勢博士はニコニコして定夫をほめた。
「バンタムに新人倉田ありと言われるだけのお方は、さすが生れながらにして、骨の髄からのボクサーですよ、まさに敬服の至りです」