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ふくいんさつじんじけん
復員殺人事件
「座談 第三巻第六号~第七号、第四巻第一号~第三号」1949(昭和24)年8月1日~9月1日、1950(昭和25)年1月1日~3月1日(未完)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 96,621 字 · 195 页
それは酒席の家族一同が見て知っていたことなのである。その手型は、兄の形見として、カトリック大辞典の間にはさんで、美津子が保存していたのであった。美津子はそれを思いだした。
そこで、現代版丹下左膳の左手の手型をとり、形見の手型と二枚を持って巨勢博士を訪ねて、鑑定を依頼した。果然、二つの手型は同じ物であったのである。
「こいつは、面白いことがありそうだね」
私たちは東海道線で、箱根へ向っていた。私の胸は、先の興味と酒興にかられて、ちかごろ例がないほど浮き浮きしていた。
「面白い、か。面白いと云えば、ねえ」
巨勢博士の声は、平常に似合わず、沈んでいた。
「どうも、先生、面白い、というより、ちょッと、凄味のありすぎるようなことが起るような気がするんですがね。すべてが、まずく行っていますよ。安彦氏は犯人を知っている。そして、犯人を知っていることが、犯人に知られている。なぜなら、犯人は日記帳を奪ったから。又、遺産相続の問題もあります。生きて還ってきたところで、どうせ、殺されるようなもんじゃありませんか」
私は博士が、こんな暗い顔をしたのを、めったに見たことがなかった。