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ふくいんさつじんじけん
復員殺人事件
「座談 第三巻第六号~第七号、第四巻第一号~第三号」1949(昭和24)年8月1日~9月1日、1950(昭和25)年1月1日~3月1日(未完)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 96,621 字 · 195 页
今しも、電話が通じたところで、きくともなしにきこえる声に、私はいさゝか度を失った。
「倉田さんでございますか。定夫さんいらっしゃいますか」
女は倉田定夫を呼びだしているのである。
バンタム新人王定夫君は、今しがた東京で私たちと別れて、サクラ拳闘クラブへ泊りに行った筈であった。果して、電話の声は不在を告げたらしい。
「どちらへおでかけか、分りませんでしょうか。今夜はお帰りでしょうか」
女はしつこく問いかけたが、答えが得られなかったらしい。あきらめて、受話器をおくと、困りきった顔をして、扉を排して現れて、私たちに、
「お待たせ致しました」
と、挨拶して、行き過ぎようとした。巨勢博士は、女をよびとめた。
「失礼ですが、倉田定夫さんにお電話なさったようですね」
女はうなずいて、博士を見つめた。二十三四、ちょッと、美しい女だが、娘だか、商売女だか、見当がつかない。ちょッと荒れた感じがあった。
「倉田定夫君でしたら、今、東京におりますよ。今夜は東京泊りだそうです。なぜかと申しますと、夕方五時半ごろ、僕は定夫君と会いましてね、定夫君は当分東京へ泊るつもりだと申しておられましたよ。