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ふくいんさつじんじけん

復員殺人事件

坂口 安吾

「座談 第三巻第六号~第七号、第四巻第一号~第三号」1949(昭和24)年8月1日~9月1日、1950(昭和25)年1月1日~3月1日(未完)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 96,621 字 · 195 页

青空文庫

そのとき警察の人々と親しくなったが、今でも忘れることのできないのは、大矢警部補と三村刑事であった。探偵趣味のある私は、私の家へ見舞った泥棒氏について色々と推理をたてたが、素人の推理というものは埒もないもので、大矢警部補と三村刑事が、長い経験から、各状況について実際的な判断を下すのをきいていると、私の推理の空想性というものが非常にハッキリして、大いに敬服したものであった。その時の大矢警部補が今は捜査主任になっているのである。彼も私を覚えていて、呵々大笑した。

「矢代さん。あなたの所の泥棒は、いまだに捕りませんよ。まことに面目ありません。あゝいう流しの泥棒は苦手でしてネ、同一犯人が同じ土地で何回も犯行をやらかす場合と違いまして、鳶が品物をさらって逃げたようなものですよ。ひとつ、あきらめて下さい」

私の場合は、夏場に避暑のヨタモノがコソ泥をやって逃げたという性質のもので、被害も大きいものではなかった。偶然以外に犯人のあがる見込みのないことは、私ものみこんでいた。

「実は、大矢さん、昭和十七年の一月末に、倉田公一、その子仁一という二名が海釣りの帰り路に轢死していた、という事件があった筈でしたね。