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ふくいんさつじんじけん

復員殺人事件

坂口 安吾

「座談 第三巻第六号~第七号、第四巻第一号~第三号」1949(昭和24)年8月1日~9月1日、1950(昭和25)年1月1日~3月1日(未完)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 96,621 字 · 195 页

青空文庫

要するに、主たる者は父親の由之氏ですよ。なぜならば、長男公一の妻女由子、目下は由之氏の夫人が妾のようなものですからね。この関係が、公一君の生前から有ったことは、町では相当知られていたのですよ」

「由之氏の正夫人は?」

「とっくに死んでいます。バアの女将や芸者などを妾にしていたこともあるし、今もそうかも知れませんが、その方面では、今でも壮者をしのぐものです。尤も、腕力の方も、今でも相当の猛者ですがね」

三村刑事は相当の時間がすぎてから、自転車でやってきた。

「ちょッと用があって、遠出しておりまして、おそくなりました」

彼は私の顔を見て、思いだしてニコニコ挨拶した。さすがに刑事というものは、記憶のよいものである。

「実は倉田公一事件のことで、巨勢さんがわざわざ情報をもたらしてくださったんだがね」

と、大矢捜査主任は、丹下左膳現代版帰還のこと、彼が犯人を見て知っていること、それらの事情を説明した。

「そうですか。私も、あの一件のアリバイについて、目下サグリを入れかけているのですが、安彦氏がハッキリ犯人を見たとすれば、然し、なぜ、応召の前に言わなかったのだろう?」