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ふくいんさつじんじけん

復員殺人事件

坂口 安吾

「座談 第三巻第六号~第七号、第四巻第一号~第三号」1949(昭和24)年8月1日~9月1日、1950(昭和25)年1月1日~3月1日(未完)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 96,621 字 · 195 页

青空文庫

その次に旦那様を殺すツモリでおいでゞしたが、赤紙が来たので、思いとゞまったゞけでございましょう。思えば、あの方も気の毒でございます。由子様は安彦様が恋いこがれた初恋の方でございます。若旦那様は兄の権力で強奪なさったようなものでございますよ。由子様は強慾な方でございます。次男坊よりも長男坊、その長男坊も結婚してみりゃ、旦那様にうとまれて、いつになったら良い目が見られるか知れたものではございません。そこで旦那様と良い仲におなりでした。それが、あなた、若旦那様存命中の出来事、ハイ、戦争このかた人間はハデになりました。安彦様にしてみれば、どいつも、こいつも、叩き殺したくなろうじゃございませんか。気の毒な御方でございます」

グルグルッと目玉をすえて一人一人を睨み廻した。とても腰をぬかして声がでなかったという御仁の演技ではない。然し、大矢捜査主任はこだわらなかった。

「お前が銃声をきいたのは何時だね」

「何時ごろだか、私は時計を見たいとも思いませんから存じませんよ」

「銃声をきくと、お前はすぐ立上って見届けに行ったのかね」

「どう致しまして。私は神仏に十分ぐらいも祈っていました。