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こいのでんしちろう
恋の伝七郎
山本 周五郎
「講談雑誌」博文館、1946(昭和21)年10月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 29,650 字 · 60 页
わけであった。
村松銀之丞は嘲笑の眼でもう一度ぐるっと彼等を眺めまわした、「どいつもこいつも骨の無い奴ばかりだ、痛いのが厭なら上手になれ、上手になる望みがなければ剣術なんか止めてしまえ、そのほうがこっちも暇が潰れなくていい、稽古というものは、……やあ伝七、おまえそんな蔭に縮まってなにをしているんだ」そう云いながら銀之丞はつかつかと片隅へいって、門弟たちの後に首を縮めていた一人の若者の肩を掴まえた、「古参のおまえがそんなことだから他の者までだらしがなくなるんだ、出ろ出ろ、久し振りでいっぽん教えてやる」「だめだよ村松、おれはもう、さんざ稽古をやったんだ、もう疲れているから勘弁してくれ」「叩っ殺しても死なないような体をして疲れたもくそもあるか、さあ出るんだ」「痛いじゃないかそんな」「だから温和しく出ろと云うんだ、それしっかり立て」「押さなくってもいい、出るよ」掴まれた肩を振りほどきながら、こちらはしょうことなしに出ていった。色の黒い頬骨の出たぶこつな顔である、眉も眼も尻下りだし、口は大きいし、どう贔屓めに見てもぶおとこという他に批評のしようがない