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こいのでんしちろう

恋の伝七郎

山本 周五郎

「講談雑誌」博文館、1946(昭和21)年10月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 29,650 字 · 60 页

青空文庫

岩へ卵を投げつける智恵

「そいつは待った、まあ一ついこう」

岩へ卵を投げつける智恵

「おれもそう思っていた」伝七郎は友達の盃に酌をしながら云った、「村松は友情のない男だ、秀才ではあるが友達の情はない男だと思っていたんだ、ところが今日そいつが間違いだということがわかった、あいつはそんな男じゃあなかった、友達のことは心配していてくれるんだ、どんなに心配していてくれたかということは……」「なんでえ、泣くのか伝さん」「聞いてくれ忠公、おれはゆうべおれがある人に惚れているということを話したな」「ああ聞いたよ、そして男一匹りっぱな惚れ方だと思うよ」「あのことだ、道場のまん中で村松がそのことを云った、満座の中で恥をかかせたと思ったが、あれはおれに勇気をつけるためだったんだ」「よくわからねえ、それあどういう組立てなんだ」「村松は今日こう云ったんだ、元気を出してやれ、相手はおれに心を寄せているんだ、高峰の花だって折れば折れる、ましてこっちは十万石の中老の子じゃあないか、剣術師範などとは身分が違う、堂々とやってみろってさ」「相手が伝さんに惚れているって」「惚れているなんぞとは武士は云わない、心を寄せているというんだ、おれもまさかと思ったが、村松は師範代としてあの家族と親しくしている、それで察しがつくとこう云う