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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

06 第六分冊

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 200,320 字 · 398 页

青空文庫

いつもながらの君恩」

秀吉は、平伏して、明朝の登城時刻を答え、また、二通の目録をさし出して、

「拝顔の儀をすました上は、またすぐ中国の任地へ赴かねば相なりませぬゆえ、一度の上府をもって、歳暮の御祝儀と、年賀の年玉を兼ね、いささかばかり新占領地の国産の品々を携えて参りました。これは筑前がほんの手土産代りと申しあげて、よろしく、御前へ御披露のほどを」

と、頼んだ。

一通は、右大臣家へ。

もう一通の目録は、御簾中、ほか奥向女房衆へのものであった。

「お取次ぎ申す」

と、押しいただいて、堀久太郎がふところに納め、

「では、おつかれのところでもあるし、われらも、明朝のお支度に忙しい。そろそろ、お暇をしようではないか」

連れの菅屋九右衛門をうながして匆々に辞しかけると、

「あいや、しばしお待ちあれ」

と、秀吉も一緒に立って、そのまま奥へ立ち去った。

ぜひなく、両使とも、そこに佇んでいたが、だいぶ手間どれるので、何故待たせるのかと疑いながら、広縁へ出て、折ふし冬ざれの寺の庭面に、霜除けをかぶって、仄かな紅を見せている寒牡丹など眺めていた。

――と、特徴のある、さっ、さっ、と聞える跫音がして来て、秀吉から二人をこう急きたてた。