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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
06 第六分冊
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 200,320 字 · 398 页
大事の御命、仕損じてはと、小心にも自身手をくだすつもりと見えました。近日に御命を果しましょう。それがしにとっても重々、迷惑、伏して御寛仁を仰ぎます。
こういったようなものである。この辞句の裏には何よりも信盛が自己の罪のみを汲々と怖れて弁解している気もちが出ている。いやそれ以外には何もないといってもいい。
(それが御機嫌に逆らったものであろう)
蘭丸にもその程度にしか考えられなかった。――けれど信長がこの書面を憎んで、信盛という人間に対しての認識を一変していたことは、やがての後に事実となってあらわれるまで、信長以外誰も信盛の肚を理解することは難しかった。
ただ、その一端として、窺われ得ないこともなかったといえる一事は、信盛から右のような通告に接しても、信長はその時、半兵衛重治の違命と怠慢に向っては、べつに激怒する容子もないし、その後も不問のまま敢えて自分からは督促していないことだった。
しかしまた、信長のそういう複雑な気の変り方を、竹中半兵衛とても、知ろうはずはなかった。
半兵衛はともかく、侍いて看護しているおゆうや家臣たちは、
「何とかなされずばなるまいが……」