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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
06 第六分冊
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 200,320 字 · 398 页
と、案じ合い、なお何日になっても、その問題を処決する容子もない半兵衛の心を読みかねて、
「どう遊ばすおつもりか」
と、無言のうちに胸をいためていたことは一通りでなかった。
そのうちに一月も過ぎた。
二月も半ばとなった。
梅が咲く。――南禅寺の山門あたりにも、この草庵の軒ば近くにも。
日ましに陽ざしも暖かになって来たが、半兵衛の病は、やはり軽くなかった。気丈ではあり、むさくるしいのが嫌いなので、どんな朝でも、病室は清掃させ、そして浄らかな朝の間の陽ざしを浴みに、縁近い南の端に黙然と疲れるまで坐っているのが、朝々の習慣のようだった。
彼女はそこへ、茶を汲んでゆく。病中の一楽はその茶碗からたちのぼる湯気の虹を朝陽のなかに眩く見ることだった。
「けさほどは、お顔色も大変良いようにお見うけいたしますが」
「そうだろう」
茶碗を抱いていた細い手のひとつを、わが頬へやって撫でまわしながら、半兵衛は、
「わしにも春が来たらしいよ。たいへんいい。この二、三日は、わけて気分がいい」
と、笑ってみせた。
顔いろもよし、気分もこの二、三日は、わけて快いという。
そういう今朝の兄をながめて、おゆうは無上に欣しかった。